平成28年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査問題(理科)大問3
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/pickup/p_gakko/28nyusen/28mondai.pdf
図2の金星の満ち欠けの様子のみから考えると、図3での正解は模範解答のイとなります。ただし、エがちょうど半分に欠けて見える位置であり、ウも半分以上は光って見えるので、ウが答えである可能性は否定できません。よりふさわしいのがイということです。
しかし、図1から月・金星・火星の位置関係を考えると、金星が月と火星のほぼ中央に位置していることから、正解はウとなります。
答えが2つ出てきてしまう訳ですが、図2ではウの可能性を否定できませんから、総合的に考えてウを選ぶという問題だと考えられます。
また、これは高校範囲(私立中学入試では上位校では出題されます)ではありますが、数学が得意な受験生は、本文中の<結果2>の記述と金星の公転周期の数値を利用して、計算によってウの位置だと求めることもできます。
これらのことから、模範解答がウであるならば、図2だけでイと判断した生徒が間違える高度な問題だと評価することも出来ます。
ただ、それは私立中学入試や国私立高校入試であればの話で、都立入試で出題するのは酷だとは思いますが…。
さらに、私有している天文シミュレーションソフトで解析してみましたが、図1・図4・図6の星の位置関係は実際の日付(3/24・5/23・7/22)とほぼ一致しており、図1(3/24)のときの図3での位置関係はウとなっています。
これらのことから、作成過程での手違いでイが正解になってしまったのだろうと思っていました。そうでなければ、指導範囲外である金星の公転周期の数値をわざわざ書く必然性がありません。
しかし東京都教育委員会が3/4に出した見解は、ミスではなくあくまで正解はイであるというもので、その理由には驚きました。
平成28年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査問題(理科)に関する見解について
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/pickup/p_gakko/28nyusen/mondai_r.html
残念ながら、この見解における「考え方」は、明らかに間違えています。
このような問題を解くときは、模式図上の地球の中心から線を引くのが大原則です。
模式図上の、実物よりはるかに大きな地球の表面から書いては、角度がずれるので正確に読み取ることが出来ません。
また「天文学的な正確さよりも設問の的確性を優先させている」とのことですが、教育機関である以上、学術的な正しさが何よりも優先されるはずです。
東京都教育委員会は、自らの非を認めた上で再発防止に全力を尽くしていただきたいと思います。